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11月2日 我らが職人は如何なる溶接姿勢もこなす。。。



素早く的確にそして丁寧に。。。








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如何なる手立てを行おうとうまくいかない。
思いつくあらゆる手段を講じるが一向に埒が明かない。
今までどれだけの月日を費やしたのか。
思い巡らし思いつく内容全てに対し果敢に最善を尽くす。
あいつばかりではない。
九州は福岡、博多の町工場の我らが職人皆あらんばかりの力を注ぎ込む。
一向に終着点は見出せず、まるでメビウスの帯をひたすら駆け巡る堂々巡りのようだ。

現場でベテラン職人が室内へと潜り込む。
しばらくたつと勢い勇んで飛び出す。そして形相を変え大きな声で発言する。
「中から外の灯りが見えるばい。」
その部屋は扉を閉めると完全に密閉された空間であり真っ暗な室内から
外の様子は眺める事はもちろん出来ない。
それに外側からはほんの僅かでも光、光子が入り込む余地などないはずだ。

部屋の上に上がり下方を見下げている若き職人に向かいそのベテラン職人は叫ぶ。
「おいっ。扉が閉まった状態で小指は入るや。」
その声が届くやいなや頭上の若き職人は指を突っ込む。
それどころか手の平が上半分入り込むではないか。
「指全部入りま~す。」と若き職人から勢いのある返事。

その様子を眺めていたベテラン職人はあいつの方へ顔を向ける。
そして語る。
「もしかしたら原因はこれじゃなかですか。」
その質問にあいつは即座には頷かなかった。
しかし、しばらくの時間の経過と共に次第に顔色に変化が見られる。
「そうかもしれんばい。」

ベテラン職人は
「この扉が曲がっとうとばい。ほらっ。ここにぶつけた跡があるもん。」
そう発言するといつの間にか姿を消す。
しばらくすると両手で丸パイプを抱えこちらへ戻って来た。
「この扉直してみようや。」
この言葉を発しながらも既に次なる仕事に掛かっている。

扉を開け最も下に両手に抱えた丸パイプを置く。
そして上に向かい大声を張り上げる。
「お~い。そこの引っ掛けにレバーホイストを掛けてんやい。」
上でベテラン職人の様子を眺めていた若き職人はそばに置かれたレバーホイストを
抱えるとフックを素早く引っ掛け反対のフックを相手側を取り付けるため奥の方へ向かった。
下からは奥へ引っ込んだ若き職人の様子は分からない。
声だけは聞こえる。
「引っ掛けました~。」

「分かった。俺が合図するけん。お前はレバーを動かせ。」
「分かりました~。」と弾むような返事。
ベテラン職人は丸パイプを扉下にがっちりとはめ込むと上に向かい声を張り上げる。
「お~いっ。そしたらレバーを動かせ。」「ゆっくりと動かせよ~。」

返事は聞こえないがガチッ、ガチッとレバーのギアの噛み込む動作音が周りに響く。
その音響のリズムと共に扉は引っ張られ軋みながら曲がっていく。
ゆっくりとじわりじわり。
ギアの動作音と扉の軋み音が相俟ってゆっくりとではあるが一定のリズムを刻む。
その音色に聞き入るうちに動作音は停止する。
すかさず若き職人の音程が聴覚を刺激する。
「もう一杯です。もう動かんです。」

「ようし分かった。今度はレバーを戻してんやい。」
ベテラン職人が声を発するやいなや又してもレバーギアの軋み音が聞こえ始める。
ゆっくりと緩めているようだ。
レバーのチェーンがこちらに向かい伸びてくる。
チェーンが伸びると共に曲げられたはずの扉も元の方向へと戻り始めた。
レバーが緩むたびに扉も戻る。しかし、レバーの解放と扉の元へと戻る速度が一定しない。
速度が決して一致しない。
ついにはレバーのチェーンだけが緩む一方でそれに扉は追随しなくなった。
扉はかなり曲げられたようだ。

「ようし。レバーホイストはずしてんやいっ。」
役目を終えたホイストは外される。そして下でも丸パイプも付近へ投げ出される。
「お~いっ。閉めてみるぜ~。」
ベテラン職人は曲げられたはずの扉を閉め始めた。
かなりの面積がある扉だ。そして閉められた。
顔を上に向け叫ぶ。「今度はどうや~。」
「あっ。今度はよかで~す。すき間が見えませ~ん。」と即座に返事が耳に届く。

ベテラン職人はあいつに向かい声を掛けた。
「送風機のスイッチを入れ温度計を見とってくれんですか。」
あいつは頷くと小走りに裏側に設置された操作盤へ小走りに向かう。
しばらく静寂なひと時が過ぎる。
ゴオ~と送風機の騒音が周りの静かな雰囲気を掻き乱す。
その独特な風切り音に耳を傾けながらベテラン職人は時を待った。



とうとうあいつからの発言が耳に届く。
「やったばい。温度が上がりようばい。」と。
それは送風機の騒音などもろともしない張りのある元気な大声だった。



この状況に至るまでの道のりはかなりの遠距離であった。
想定される原因は全て手はずを踏み何の漏れもなく実証した。
今回の原因である扉の隙間は実のところ「ない」と言う前提だった。
見落としたのではなく原因究明当初から回答のひとつにさえあげられてなかった。
まさしく想定外でありそれこそ灯台下暗しと言えるだろう。
決してやってはならない思い込みと言う固定された観念が堂々と披露された結果と言える。
常に広い視野と柔軟なる頭脳を持つことこそが本来のものづくりそのものである。
常識を疑い現地、現物、現人主義を貫徹させる。
思い込みこそが次なる展開を簡単に邪魔をする。


さあっ。次には如何なるトラブルが我が九州は福岡、博多の町工場を
待ち構えているのであろうか。




それでは又です。


読破。
「朽ちる散る落ちる」森博嗣著。
テロリストまで持ち出すのは少々無理があるのでは。
しかし、細かい人間模様を描き出す力には感服する。
一流の屁理屈と共に本来の小説の持つ力を存分に発揮しているようだ。


読破中。
「赤緑黒白」森博嗣著。
いよいよこのシリーズ最終巻。


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2007.11.2by 博多の森と山ちゃん




by moritoyamachan | 2007-11-02 20:41 | 我らが職人
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